チョコレートの秘密

私たちの生活に欠かせない、あま~い誘惑、チョコレート。1コインで買える手ごろなお菓子チョコから、一粒が1,000円以上もする有名ショコラティエの作る独創的、芸術的なショコラまで、ありとあらゆるチョコレートが楽しめます。

 チョコレートは今や国民的行事の一つとなっているヴァレンタインデーには欠かせない存在です。2022年のヴァレンタインデーでのチョコレート販売の推計は前年を12%上回る約1175億円。(記念日文化研究所調べ)214日のヴァレンタインデーには、年間の売り上げの1割を売り上げるといわれています。

 香りの世界でも“グルマンノート”という、甘いお菓子やチョコレートを想起させる香水やスキンケア、ボディーケア商品が人気です。

 この人々を魅了してやまない、“チョコレート”の秘密についてご紹介します。

チョコレートの起源


チョコレート誕生の地は現在のメキシコ南部、中央アメリカです。農耕文化やマヤ文明、アステカ文明が反映した地域です。

オルメカ文明(BC1500年頃~400年頃)はメキシコ湾岸沿いの肥沃な低地に築かれた中米最古の文明で、オルメカ族には“カカオ(カカウ)”という言葉があります。カカオを最初に利用した民族とされています。

 マヤ文明(BC1000年頃~16世紀頃)ではユカタン半島でカカオの栽培が行われていた記録があります(4~9世紀頃)。マヤ族はカカオを貨幣として利用していました。また、マヤの王族など位の高い人々の間では、カカオの種子をすりつぶした物を神への捧げものにしたり、結婚式では現在のシャンパンのように飲む習慣がありました。

 チョコレートの原料である「カカオ」の正式な学名「テオブロマ」は“神の食べ物”という意味なのです。古代文明でチョコレートは特別な貴重なものだったようです。

 アステカ王国(14世紀~16世紀初頭)は、14世紀にテノチティトラン(現在のメキシコシティ)を首都として建設されましたが、16世紀初頭にスペインの軍隊により征服され滅亡しました。遺跡や文献などは破壊されましたが、多くのスペイン人がアステカ文明におけるカカオの役割について記しておりその重要性が伝わっています。

 

アステカ人が愛したチョコレートの祖、ショコラトルの味は?


 

アステカ王国ではカカオから作る“ショコラトル”なる飲み物がありました。

 

~ショコラトルの作り方~

  • 乾燥させたカカオ豆を炒る
  • 殻を取り除き、石臼で砕く。
  • 少しずつ水で溶きながら、トウモロコシの粉、トウガラシ、食紅を加え泡立てる

 

チョコレートの祖、と言われるショコラトルはまったく甘くなかったのです。

むしろ、苦みや辛味を感じる飲み物だったようです。

アステカの王様はショコラトルを黄金のカップで日に何度も何杯も強壮剤として好んで飲んでいたとか。

 

チョコレートは海を渡って甘くなった?


アステカ王国で貴重品だったカカオを使った飲み物ショコラトル。しかし、征服者たちの口には合わなかったようです。この不思議な飲み物ショコラトルは。スペインの将軍だったフェルナンド・コルテスがカカオの薬としての効能やアステカ人らが貨幣として使用している価値に気づき、スペインに持ち帰りカルロス1世に献上します。同行した聖職者たちもカカオを持ち帰ります。

大航海時代、砂糖やカカオの栽培が始まり、新世界からの輸出が始まりました。ヨーロッパ出発時には織物や武器などを載せ、アフリカで奴隷と交換、新世界で砂糖やカカオを載せてヨーロッパへという大西洋三角貿易です。

そして、スペインにやってきたカカオ。貿易で輸入してきた砂糖やバニラを使い、苦みを抑えることができました。やっと甘くて飲みやすいチョコレートの誕生です。

しかしまだ濃厚で飲みにくい飲み物だったようです。この時点では、チョコレートはまだ飲み物でした。

 

カカオはしばらくはスペインが独占していましたが、17世紀になるとヨーロッパ各地へと広がっていきました。

イタリアへはスペイン王室出入りのフィレンツェの商人、アントニオ・カルレッティが栽培方法、加工法、飲み物のレシピまでイタリアに持ち帰りチョコレートを広めました。

また、スペイン王室とフランスの間で行われた2度の政略結婚の際に、2人の王女がチョコレートと共にお輿入れ。なんとお抱えのショコラティエを連れてフランスへ渡り、その製法が徐々に各地へと伝わっていきました。

チョコレートとココアは同じ?


 

ココアとホットチョコレート。

これって同じもの?別々の物のように感じませんか? 

ココアの原料は、カカオ。チョコレートと同じなのです。 

ホットチョコレートとココアの違いは??? 

どちらも元をたどれば、原料はカカオで同じものです。作られる工程に違いがあります。 

カカオニブ・・・カカオ豆を焙煎し、胚乳部を取り出したもの。

カカオマス・・・分離したカカオニブを細かく粉砕したもの。チョコレートの原料となる。

ココアパウダー・・・カカオマスから油脂分を絞り残った固形物「カカオケーキ」を細かく粉砕、パウダー状にしたもの

<それぞれのつくり方の違い>

*ホットチョコレートは、チョコレートを温めて牛乳を入れたもの。

*ホットココアは、ココアパウダーをお湯で溶いたもの、です。

お店によって作り方が違うのかもしれませんね。

 

チョコレートの香り


チョコレートの甘い香りは、私たちにどんな効果をもたらしているのでしょう?

そもそも原料であるカカオ自体には香ばしい、苦い、というような香りがして、甘みは感じられません。製造工程の発酵させたのち、焙煎させることで初めてチョコレートらしい香りが発生するのです。その“チョコレートの香り“というものは、600種もの異なる香気成分から成り立っているのです。

 

 チョコレートとローズの関係



花の香りの女王、ローズ。ローズを構成している香り成分は、500とも1000とも言われています。調香師の匹田にローズとチョコレートの意外な関係について聞いてみました。

“ローズを構成している香り成分は、500とも1000とも言われています。その代表的な香気成分として、Phenyl ethyl alcohol(フェニルエチルアルコール)と呼ばれる成分があります。Phenyl ethyl alcoholは耳鼻科で行われる嗅覚検査の5種類あるうちの1種としても使われています。香りそのものはそこまで強くありませんが、ローズの花弁を想起させる香りです。この、花の香りの女王、ローズ。実は“ハチミツ”“チョコレート”の香りを作る際にも重要なアクセントとして使われます。使う香りが結構似ているのです。Phenyl ethyl alcoholのようにPhenyl系の香料は、ハチミツ様(よう)の香気を有したものが多くハチミツフレーバーの香り立ちや芳醇なコクを増強するのに効果的に使われます。そして、チョコレートフレーバーではココアパウダーのような、キュッとした酸味と渋みを感じる、カカオ感の増強に使用されます。フレーバーには「調理や加工途中で素材から失われた風味を補う」という役目がありますが、ハチミツもチョコレートも、口に入れた時にフワッと広がる風味の付与としてフレーバーは欠かせません。またローズ香料の官能評価でも「Honey感が 強い/弱い」などの評価がされることがありますが、ローズの評価をする際にもハチミツっぽい、という表現があるくらい香りとして近い存在となんですよね。ちなみに私はチョコレート味のプロテインを飲んだ際にとてもローズを感じます()フレグランスとフレーバーで共通して使用する香りは他にもありますので、またの機会にご紹介します。“

なんとチョコレートの香りにはローズと同じ香気成分が隠れていたのですね。

皆さんもチョコレートを食べるときに、確認してみてくださいね。

 

 チョコレートのいがいな効能


チョコレートといえば、カカオの抗酸化作用が有名ですそれだけではないのです。

私たちは香りを鼻と脳で感じているといわれています。香りは私たちの精神活動と密接に関係してます。ほっと一息リラックスするときに、コーヒーの良い香りをかいだり、眠気を感じるときにミントのガムを噛んだりしたことはありませんか?

チョコレートを食べたとき、幸福な気分になる方が多いと思いますが、実はチョレートの香りは人の集中力や記憶力を高めることが脳波や学習実験で実証されているのです。

仕事や勉強の合間にぜひチョコレートを食べて気分転換を図ってみてはいかがでしょうか。

 

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